ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

kaigaikenshu_43

Ⅰはじめに近年、わが国ではようやく家族の概念の多様化を踏まえながら、家族成員一人ひとりの自立を目指すための条件整備という観点から家族支援に目が向けられ始めた。しかし、その支援基盤はいまだ脆弱なままである。高林(2008)(部分は後述の文献著者名、以下同様)は、例えばスウェーデンの社会福祉を例に挙げて、次のように述べている。スウェーデンではノーマライゼーションの概念が提示されて以降、その推進のための基盤的条件として「それらの政策は障害者だけに限ったものではなく、国家の責任による完全雇用政策および社会政策、社会保障制度の発展によって、労働者・勤労者とその家族、すなわち国民全体の労働・生活条件のノーマルな基準(標準)の確立と平行して進められてきた」点について触れ、日本におけるノーマライゼーションは戦後の施設収容から地域生活へと障がいのある人の生活の場を移行していくにあたって、形骸的理念の状態のまま日本型福祉の名のもとに家族責任のうえに場を移すのみで進められてきたことを指摘している。そして、構造改革を経た今日でも、家族の機能を維持するためのワーク・ライフ・バランス、特に主たる養育・介護役割を担う女性(母親)のワーク・ライフ・バランスについての考慮は希薄なままであると述べている。ノーマライゼーションの概念については、提唱され始めた時点では障がいのある個人に焦点を当てられていたが、その実現においては内容や対象者の範疇についても時代や社会背景を踏まえながら検討していく必要があり、わが国の場合には、多大な負荷や制約のかかる人生を送らせ続けることを前提とされてきた主介護者、特に母親の生活については改善の目を向けていく必要があると考えられる。これは1980年代の研究ではあるが、障がいのある子どもを包含した親子心中を分析した報告では、母子心中が過半数を占め、母親と対象児と共に他の家族メンバーも包含するケースも含めると約9割にのぼることになることが指摘されている(一門・浦野・勝俣1985)。安梅(2004)は、ノーマライゼーションの実現とは「[主体的に人間らしく幸福に生きる権利](日本国憲法第13条)の基盤の整備を行う社会的努力である」とし、「主体的に人間らしく生きる」とはQOL(生活の質)を高めることに他ならないと述べている。以上のような経緯とともに研究の蓄積も踏まえ、障がいのある人をメンバーにもつ家族の支援については、日本でも、近年、次第に重要視されるようになってきた。しかし、家族のストレスに対する対処法や家族の関係調整という支援についてはまだ端緒についたばかりである。海外においては、家族メンバー一人ひとりのワーク・ライフ・バランスを考慮した福祉のありかたは、どのようにして行われているのであろうか。障がいのある当事者も家族も共に支援し、「支援関係づくり」「家族のケア」「家族間の関係調整」「ボランティア育成方法」「施設内だけでなく地域の社会とどうつながるか」について、学ぶことが私の個人研修の目的である。そして、社会福祉基礎構造改革(平成12年6月)、支援費制度(平成15年4月)から障害者自立支援法(平成17年11月)を経て、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成25年4月)? 102 ?